「今夜 誰のとなりで眠る」(著・唯川恵)
タイナカサチさんが読んでいたので読んでみた。ぬぅぅぅ、侮ってた。携帯小説ではないにしても、セカチューとかそういった類の甘いか、苦いがはっきりした小説だと見誤ってた。(直木賞作家なのね…)
女性5人が1人の男性の死を中心に回りだすオムニバス的小説。女性作家が30代半ばの女性の話を書けば、そこには自然とドス黒く蠢く女性の嫉妬、焦燥感、諦念、虚栄心が垣間見える。
秋生というある意味女性の理想形(優しく自分のことを良く理解してくれ、それとなく助けてくれる男性)は出て来るが、視界に広がるのは未だ女性への福祉、理解の足りない社会、すれ違う男女の想い、内外の自己の齟齬など、決して読んでていて気分の良いものではない。
性に対する赤裸々な告白、濡れ場の描写もあって驚いた。如何にも文学的な小説だ。
現代のバブル世代の女性の話と仮定しても、共感出来る人と出来ない人で真っ二つに分かれそう。それは男性、女性という性差よりも秋生の考え方・生き方に同調できるか否かではないか。
男女問わずはっと気付かされる箇所もあるが、それは自問自答の問いであって、答えではない。ラストもハッキリした形を持って終わらず、将来、同様、もしくは別の問題が起こる気がする。
正直、今の小説ではない。古さを感じた。アラサー、アラフォーが読んでもどうなのかな…女性の感情表現はリアルにしても、現実の冷たさはこんなに生温くないぞって返しそう。
20代のタイナカサチさんが「良いよ」と思えたってのは興味深い。彼女の描く歌詞とはギャップが感じられる。こうしたOL、妊婦、不倫の世界を彼女の詩に反映したところでリスナー受けはしないだろうけどね。個人的には聞いてみたい。